奈良時代:天平文化

 

 

1. 天平文化とは?

いつ頃の文化?

奈良時代の聖武天皇(しょうむてんのう)の治世(在位724~749年)を中心とした、8世紀頃に栄えた文化です。

当時の年号「天平(てんぴょう)」から、この名前が付けられています。

3つの大きな特徴

国際色豊か:

遣唐使(けんとうし)がもたらした、唐(とう)の文化の影響を強く受けています。

さらに、唐は当時、西アジア(ペルシャ)やインド、遠くは東ローマ帝国など、世界中と交流する国際都市でした。

そのため、唐を経由して、シルクロードを通じた国際色豊かな文化が日本にも伝わりました。

仏教中心の文化:

聖武天皇が仏教の力で国を治めようとした(鎮護国家思想)ため、文化も仏教が中心となりました。

国家の保護のもとで、壮大な寺院や仏像が数多く作られました。

都の貴族が中心:

飛鳥文化が、蘇我氏などの特定の豪族を中心としていたのに対し、天平文化は、都である平城京に住む貴族たちが担い手となりました。

 

2. 天平文化の代表的な作品と文化財

天平文化を代表する作品の多くは、聖武天皇が建立した東大寺と、その宝物庫である正倉院(しょうそういん)、そして唐から来日した僧・鑑真(がんじん)が建てた唐招提寺(とうしょうだいじ)で見ることができます。

【建築】

東大寺法華堂(とうだいじほっけどう)

「三月堂」とも呼ばれます。

天平時代の建築様式を今に伝える、貴重な建物です。

正倉院宝庫(しょうそういんほうこ)

東大寺の境内にあり、聖武天皇ゆかりの品々などを収蔵しています。

木材を三角形に組んで積み上げる「校倉造(あぜくらづくり)」という建築様式で有名です。

高温多湿な日本の気候の中で、宝物を守るための優れた構造でした。

唐招提寺金堂(とうしょうだいじこんどう)

鑑真が創建した寺院の金堂で、天平時代の雄大で安定感のある建築様式を代表する建物です。

【彫刻(仏像)】

素材: この時代には、乾漆造(かんしつづくり)や塑像(そぞう)といった新しい技法が用いられました。

これにより、より写実的で生き生きとした表情の仏像が作られるようになりました。

乾漆造: 粘土の原型の上に麻布を漆で貼り重ねて作る技法。

軽くて丈夫。

塑像: 粘土で直接形を作る技法。

細かい表現が可能。

代表作:

東大寺法華堂の不空羂索観音像(ふくうけんさくかんのんぞう)(乾漆造)

興福寺の阿修羅像(あしゅらぞう)(乾漆造)

三つの顔と六本の腕を持つ、憂いを帯びた少年のような表情で非常に有名です。

東大寺戒壇堂の四天王像(かいだんどうのしてんのうぞう)(塑像)

邪鬼を踏みつける、迫力に満ちた写実的な像です。

【絵画】

正倉院鳥毛立女屏風(しょうそういんとりげりつじょのびょうぶ)

ふくよかな女性を描いた屏風で、唐の美人画の影響を強く受けています。

薬師寺吉祥天像(やくしじきちじょうてんぞう)

これも唐風の美人画の代表作です。

【工芸品 ― 国際色豊かな正倉院宝物】

正倉院には、聖武天皇が愛用した品々が納められており、天平文化の国際性を最もよく示しています。

螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんのびわ)

貝殻の真珠層をはめ込む「螺鈿」の技法が使われた五弦の琵琶(びわ)。

ラクダに乗ったペルシャ風の人物が描かれており、シルクロードを通じた文化交流を物語っています。

漆胡瓶(しっこへい)

ペルシャ(現在のイラン)風の水差し。

白瑠璃碗(はくるりのわん)

ガラス製の器。

東ローマ帝国(ビザンツ帝国)から伝わったと考えられています。

【歴史書・地誌・文学】

歴史書の編纂: 国家の正統性を示すため、この時代に日本で最初の公式な歴史書が編纂されました。

『古事記(こじき)』(712年):神話や伝説が多く、物語風に書かれています。

『日本書紀(にほんしょき)』(720年):天皇の治世を中心に、編年体(年代順)で書かれた、日本初の正史です。

『風土記(ふどき)』: 各国に、その土地の産物や地理、伝説などを記録・報告させた地誌。

『出雲国風土記』がほぼ完全な形で残っています。

『万葉集(まんようしゅう)』:

日本に現存する最古の和歌集です。

天皇や貴族の歌だけでなく、兵士である防人(さきもり)や農民など、様々な身分の人々の素朴で力強い歌が収められているのが大きな特徴です。

 

まとめ

天平文化は、遣唐使がもたらした唐の文化と仏教を二つの柱として、国際色豊かに花開いた、貴族中心の文化でした。

その壮大で写実的な作品の多くは、聖武天皇の鎮護国家の願いと結びついています。

東大寺、正倉院、鑑真、そして『万葉集』といったキーワードが、この華やかな文化を理解する上で重要です。

 

歴史
人類の出現 旧石器時代、新石器時代 四大文明 ギリシャ・ローマの古典文明 日本のあけぼの:旧石器時代、縄文時代 日本のあけぼの:弥生時代 大和政権と古墳時代:邪馬台国と卑弥呼 大和政権と古墳時代:大和政権と古墳 大和政権と古墳時代:大陸との交流 飛鳥時代:仏教の伝来 飛鳥時代:聖徳太子の政治 飛鳥時代:大化の改新と律令国家 飛鳥時代:白村江の戦い 奈良時代:律令制度と平城京 奈良時代:班田収授法と租・庸・調 奈良時代:聖武天皇と国分寺・東大寺 奈良時代:天平文化 平安時代:平安京への遷都 平安時代:摂関政治 平安時代:武士の発生 平安時代:国風文化 平安時代:院政と平氏 鎌倉時代:鎌倉幕府の成立 鎌倉時代:御家人と封建制度 鎌倉時代:承久の乱と執権政治 鎌倉時代:元寇 鎌倉時代:鎌倉仏教 室町時代:建武の新政と南北朝 室町時代:室町幕府の成立 室町時代:勘合貿易 室町時代:応仁の乱と戦国時代 室町時代:北山文化と東山文化 安土桃山時代:戦国大名の登場 安土桃山時代:ヨーロッパ人との出会い 安土桃山時代:豊臣秀吉による天下統一 安土桃山時代:桃山文化 江戸時代:江戸幕府の成立 江戸時代:幕藩体制 江戸時代:士農工商の身分制度 江戸時代:鎖国政策 江戸時代:産業の発達と交通網の整備 江戸時代:元禄文化 江戸時代:江戸時代の三大改革 江戸時代:化政文化 江戸時代:欧米列強の接近と幕府の動揺 江戸時代:開国と幕末の動乱 明治時代:大政奉還、王政復古 明治時代:明治維新 明治時代:富国強兵 明治時代:文明開化 明治時代:自由民権運動と大日本帝国憲法 明治時代:日清戦争・日露戦争 明治時代:不平等条約の改正 明治時代:日韓併合 世界の動き:市民革命 世界の動き:産業革命 世界の動き:アジアの植民地化 大正時代:第一次世界大戦と日本の参戦 大正時代:大正デモクラシー 大正時代:米騒動、社会運動の活発化 昭和時代:世界恐慌と日本の経済危機 昭和時代:軍部の台頭と満州事変 昭和時代:日中戦争と第二次世界大戦 昭和時代:ポツダム宣言受諾と日本の敗戦 昭和時代:民主化政策と日本国憲法 昭和時代:二つの条約 昭和時代:高度経済成長と国民生活の変化 昭和時代:公害問題 世界の動き:国際連合の発足 世界の動き:冷戦 世界の動き:アジア・アフリカ諸国の独立 世界の動き:冷戦の終結とグローバル化 平成時代:日本のバブル経済とその崩壊 現代:現代社会の課題 現代:新型コロナウイルスの流行と影響