室町時代には、二人の対照的な将軍を中心に、それぞれ特徴の異なる文化が花開きました。
幕府の力が最も輝いていた頃の「北山文化」と、応仁の乱を経て、静かな美しさを求めた「東山文化」です。
室町時代の前期、幕府の全盛期を築いた3代将軍・足利義満の時代に栄えた文化です。
義満が京都の北山に建てた別荘が中心であったことから、「北山文化」と呼ばれます。
武家文化と公家文化が融合し、さらに明(中国)との勘合貿易によってもたらされた大陸文化の影響も受けた、豪華で力強い文化です。
将軍の権力の大きさを内外に示すような、きらびやかな側面を持っています。
義満が建てた金閣は、北山文化を象徴する建物です。
三層構造になっており、各層が異なる建築様式で建てられています。
一層(一階):公家風の寝殿造
二層(二階):武家風の書院造
三層(三階):禅宗様式の仏殿
観阿弥(かんあみ)・世阿弥(ぜあみ)の親子が、それまでの猿楽や田楽をもとに、物語性のある能(能楽)として大成させました。
義満はこれを手厚く保護しました。
能の合間に演じられた、庶民の日常を題材にした喜劇が狂言です。
室町時代の後期、応仁の乱のころに、文化人としても知られた8代将軍・足利義政の時代に生まれた文化です。
義政が京都の東山に建てた別荘が中心であったことから、「東山文化」と呼ばれます。
応仁の乱による社会の混乱や、禅の精神の影響を受け、**簡素で静かなものの中に美しさを見出す「わび・さび」**という美意識が重視されました。
派手さよりも、内面的な精神性を大切にする文化です。
義政が建てた銀閣は、東山文化の象徴です。
金閣とは対照的に、華やかさはありませんが、落ち着いた美しさを持っています。
銀箔は貼られていません。
銀閣に付属する東求堂同仁斎(とうぐどうどうじんさい)は、書院造の原型とされ、床の間や違い棚、畳、障子といった、現在の和室の原型となりました。
禅の精神と結びつき、墨の濃淡だけで自然などを表現する水墨画が発展しました。
特に**雪舟(せっしゅう)**は、明で絵を学んだ後、日本の自然を描き、日本独自の水墨画を大成しました。
代表作に『秋冬山水図』や『天橋立図』などがあります。
水を使わずに、石や砂で山や水の流れを表現する庭園様式です。
京都の竜安寺の石庭などが有名です。
茶の湯(茶道):村田珠光(むらたじゅこう)が、禅の精神を取り入れ、簡素な茶室で精神的な交流を重んじる「わび茶」を始めました。
華道(花道):生け花が成立し、池坊専慶(いけのぼうせんけい)などが活躍しました。
| 北山文化 | 東山文化 | |
|---|---|---|
| 中心人物 | 3代将軍 足利義満 | 8代将軍 足利義政 |
| 時代 | 室町時代前期(幕府の最盛期) | 室町時代後期(応仁の乱のころ) |
| 特徴 | 豪華で力強い(公家+武家+大陸) | 簡素で静か(わび・さび) |
| 代表建築 | 鹿苑寺金閣 | 慈照寺銀閣 |
| 建築様式 | 寝殿造など | 書院造(和室の原型) |
| 芸能・芸術 | 能・狂言(観阿弥・世阿み) | 水墨画(雪舟)、茶の湯、華道 |
応仁の乱で多くの文化人が京都から地方へ逃れたため、東山文化は全国に広まり、その後の日本の文化に大きな影響を与えました。