奈良時代:班田収授法と租・庸・調

 

 

1. すべての土台となる大原則:「公地公民」

まず、この時代のすべての仕組みの土台には、「公地公民(こうちこうみん)」という大原則があります。

意味:

「すべての土地(公地)と、そこに住むすべての人々(公民)は、私のものではなく、公(おおやけ)のもの、すなわち国家(天皇)のものである」という考え方です。

この原則があったからこそ、国は人々に土地を分け与え、その見返りに税金を集めることができたのです。

 

2. 土地のルール:「班田収授法」

「公地公民」の原則を、具体的な土地制度として実行するための法律が「班田収授法(はんでんしゅうじゅのほう)」です。

どんなルール?

まず、国は6年に一度、「戸籍(こせき)」を作って、国内にいるすべての人々を把握します。

その戸籍にもとづいて、6歳以上のすべての人(男女問わず)に、「口分田(くぶんでん)」という田んぼを、国から貸し与えます。

貸し与えられた口分田は、生涯にわたって耕作することができますが、その人が死んだら、国に返さなければなりません。

目的は?

人々を土地に縛り付け、確実に把握すること:

人々は国から土地を与えられることで、その土地から離れられなくなります。

これにより、国は誰がどこに住んでいるかを正確に把握でき、税金を確実に徴収できるようになります。

人々に最低限の生活を保障すること:

すべての国民に田んぼを与えることで、生活の基盤を保障するという側面もありました。

課題は?

6年ごとの戸籍作成や、土地の分配・回収は、役人にとって非常に大変な作業でした。

人口が増えてくると、人々に分け与える口分田がだんだん不足してくるという問題も抱えていました。

 

3. 税金のルール:「租・庸・調」

国から口分田を与えられた人々(農民)は、その見返りとして、国に対して重い税を納める義務がありました。

その中心となったのが「租(そ)・庸(よう)・調(ちょう)」です。

税の種類 誰が納める? 何を納める? どこへ納める? 特徴
租(そ) 口分田を持つ人々 収穫した稲の約3% 地方の役所(国衙)の蔵へ

比較的軽い負担。

地方の役所の運営費などに使われた。

庸(よう) 成人男性 都での労役(10日間)
または、その代わりの布
都(平城京)へ

労役は大変なので、多くは布で代納した。

調(ちょう) 成人男性 その地方の特産品
(絹、布、塩、海産物など)
都(平城京)へ

都の貴族や役人の生活を支えるための税。

非常に重い負担だった庸と調:

庸・調は、都まで自分で運ばなければなりませんでした。

当時の交通事情では、地方から都まで荷物を運ぶのは、数ヶ月かかる命がけの旅であり、食料も自腹でした。

この負担が農民を最も苦しめました。

【租・庸・調以外の、さらに重い負担】

農民たちの負担はこれだけではありませんでした。

雑徭(ぞうよう):

地方の国司のもとで、年に60日以内、土木工事などの労働に従事しました。

兵役(へいえき):

成人男性の約3~4人に1人が兵士に選ばれました。

都の警備などにあたるほか、一部は九州北部の防衛にあたる「防人(さきもり)」として、故郷を遠く離れて3年間も任務につかなければなりませんでした。

家族との別れを悲しむ歌が『万葉集』にも残されています。

 

4. 制度の崩壊へ:「浮浪」と「逃亡」

これらのあまりにも重い税負担に耐えきれなくなった農民たちは、

与えられた口分田を捨てて、戸籍に登録された場所から逃げ出す(逃亡)

税を逃れるために、あてもなくさまよう(浮浪)

という行動をとるようになります。

このように、人々が土地から離れてしまうと、国は戸籍で人々を把握できなくなり、税金を集めることもできなくなってしまいます。

その結果、班田収授法を基本とした律令国家の土地制度と税制度は、時代が進むにつれて、だんだんと崩れていくことになるのです。

 

まとめ

班田収授法は、国が人々に口分田を与え、死んだら返させるという土地のルール。

租・庸・調は、その見返りに人々が国に納めた税金。

特に、庸・調や防人といった都での義務が農民を苦しめ、逃亡する者があとを絶たなかった。

この農民の逃亡が、律令制度を根底から揺るがす大きな問題となっていった。

この2つの制度は、律令国家の理想的な仕組みでしたが、現実の農民たちにとっては、非常に過酷なものであったという側面を理解することが大切です。

 

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