まず、「文化」という言葉を少し広く捉えてみましょう。
文化とは、「ある社会に属する人々が、長い時間をかけて築き上げ、受け継いできた、共通の生活様式や価値観、知識、技術、芸術などの総称」です。
これには、私たちが普段「文化」と聞いてイメージする芸術や文学だけでなく、
● 衣・食・住のスタイル(着物、和食、日本家屋など)
● 使っている言葉や、ものの考え方
● 年中行事やお祭り、冠婚葬祭などの慣習
● 伝統工芸や伝統芸能(歌舞伎、能など)
といった、非常に幅広いものが含まれます。
これら全てが、日本の「文化」なのです。
「伝統文化」とは、これらの文化の中でも、特に昔から受け継がれ、その土地の歴史や風土と深く結びついている文化のことを指します。
では、なぜ私たちは、この伝統文化を尊重し、大切に受け継いでいく必要があるのでしょうか。
「アイデンティティー」とは、「自分は何者であるか」という自己認識のことです。
私たちが「日本人である」という意識を持つとき、その背景には、日本語を話し、お正月にはおせちを食べ、地域の祭りを見て育った、といった共通の文化的体験があります。
伝統文化は、私たちに「自分たちのルーツ(根っこ)」を教えてくれ、社会の一員としての連帯感や、郷土への愛着を育んでくれます。
お正月、節分、ひな祭り、七夕、お盆、お月見…。
日本の年中行事は、季節の移り変わりを感じさせ、私たちの生活にリズムと彩りを与えてくれます。
京都の祇園祭や青森のねぶた祭といったお祭りは、地域の人々の心を一つにし、日々の疲れを癒し、明日への活力を与えてくれる大切なイベントです。
これらの行事や祭りがなくなってしまったら、私たちの生活はとても味気ないものになってしまうでしょう。
和食は、季節の食材を活かし、栄養バランスにも優れた健康的な食事として、ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。
京都の町家のような伝統的な家屋は、日本の蒸し暑い夏を快適に過ごすための、自然の力を利用した知恵(風通しを良くするなど)が詰まっています。
このように、伝統文化には、その土地の自然環境の中で、人々がより良く生きていくために積み重ねてきた、貴重な知恵や工夫が凝縮されています。
しかし、グローバル化や生活様式の変化の中で、日本の伝統文化は多くの課題に直面しています。
伝統工芸や伝統芸能の世界では、若い世代のなり手が減り、技術の継承が危ぶまれています。
少子高齢化や過疎化によって、地域の祭りを維持していくことが難しくなっている場所がたくさんあります。
着物を着る機会が減ったり、家庭で年中行事を行わなくなったりするなど、日常生活の中で伝統文化に触れる機会が少なくなっています。
では、私たちは大切な伝統文化を未来につなげていくために、何をすればよいのでしょうか。
まずは、自分の住んでいる地域にどのような伝統文化やお祭りがあるのかを知ることが第一歩です。
そして、地域の行事やお祭りに積極的に参加してみることが大切です。
伝統をただ昔のまま守るだけでなく、現代の感覚や技術を取り入れて、新しい魅力を持った文化として発展させることも重要です。
例:伝統的な和柄を、現代的なファッションやスマートフォンのケースのデザインに取り入れる。
伝統芸能を、インターネットを通じて世界に発信する。
国も、文化財保護法などを定めて、歴史的・芸術的に価値の高い建造物や美術品、芸能などを文化財として指定し、保護・保存に努めています。
伝統文化は、博物館の中に飾っておくだけのものではなく、私たちの暮らしの中で活かされ、楽しまれ、そして次の世代へと受け継がれていくことで、初めてその価値を輝かせることができるのです。
日本の伝統文化は、神道や仏教の影響を受けて発達してきた。
伝統行事や通過儀礼には、神道や仏教に関わり深いものが多くある。
文明と文化の違い
文明 :
人間が創り出した高度な社会。(対義:自然) → 人類が共有できる。
文化 :
人間が築き上げてきた価値観や信念。またそれによって生み出されたもの。
(学問、文学、音楽、美術 など) → 人類が共有できない。
もともとは、社会の主流(メイン)となる文化に対して、一部の若者や特定の趣味を持つ人々が担ってきた、副次的(サブ)な文化を指す言葉でした。
● 漫画(Manga)
● アニメ(Anime)
● テレビゲーム(Video Games)
● 特撮ヒーロー(ウルトラマン、仮面ライダーなど)
● コスプレ
● J-POP、アイドル文化
かつては「子どもが見るもの」「オタクの趣味」といった見方をされることもありましたが、現在では、これらの文化は日本を代表する主要な文化の一つとなり、国境を越えて世界中に大きな影響を与える存在になっています。
日本の漫画やアニメ、ゲームは、単なる娯楽としてだけでなく、様々な形で世界に影響を与えています。
漫画の翻訳版、アニメの放映・配信、ゲームソフトの販売、関連グッズ(フィギュアやおもちゃなど)の輸出は、日本の重要な輸出産業の一つとなっています。
日本の自動車や家電と同じように、日本のサブカルチャーは世界で「売れる」商品なのです。
「聖地巡礼」といって、アニメや漫画の舞台となった場所を訪れるために、世界中から多くのファンが日本にやってきます。
東京の秋葉原や池袋のように、サブカルチャー関連のお店が集まる街は、外国人観光客にとって大人気の観光スポットとなっています。
「字幕なしでアニメを見たい」「漫画の原作を日本語で読みたい」という思いから、日本語を学ぶきっかけになる外国人が非常に多くいます。
アニメや漫画に描かれる、日本の学校生活(部活動や制服)、食べ物(お弁当、おにぎり)、風景(桜や神社)などを通じて、日本の生活様式や文化、価値観に興味を持つきっかけにもなっています。
海外の有名な映画監督やアーティストの中には、『AKIRA』やスタジオジブリ作品など、日本のアニメや漫画から大きな影響を受けたことを公言している人がたくさんいます。
日本の表現方法が、世界のクリエイティブな分野に刺激を与えているのです。
“Manga”, “Anime”, “Kawaii”, “Otaku” といった言葉は、もはや日本語ではなく、世界でそのまま通じる言葉になっています。
好きな漫画やアニメ、ゲームの話題は、国籍や言語、文化の違いを超えて、世界中の人々と友情を育むための共通言語となり得ます。
コスプレイベントなどは、世界各地で開かれ、ファン同士の国際的な交流の場となっています。
軍事力や経済力といった、強制的な力(ハードパワー)とは対照的に、文化や価値観の魅力によって、 相手国の人々の心を惹きつけ、信頼や共感を得る力のことを「ソフトパワー」といいます。
日本のサブカルチャーは、日本のイメージを向上させ、世界の中に多くの「日本ファン」を増やす上で、非常に大きな役割を果たしています。
政府も「クールジャパン」戦略として、こうした文化の海外発信を後押ししています。
一方で、日本のサブカルチャーには課題もあります。
インターネット上に、漫画やアニメの違法な海賊版サイトが後を絶たず、作者や制作会社の利益が損なわれています。
アニメーターの低賃金・長時間労働など、魅力的な作品を生み出す現場の労働環境が厳しいという問題も指摘されています。
それでも、日本のサブカルチャーが持つ、人々を楽しませ、国境を越えてつなげる力は、非常に大きなものです。
これらの文化は、グローバル化が進む現代社会において、日本が世界に対して存在感を示し、国際社会と良好な関係を築いていくための、かけがえのない大切な資源なのです。
日本は戦後、漫画、アニメ、テレビゲームなどが急速に発達し、日本独自の新しい文化を形成してきた。
その独自の文化が日本のサブカルチャーとして、世界に大きな影響を与えている。