人権の尊重:基本的人権の尊重

 

 

1. 基本的人権とは?

一言でいうと、

人間が、人間であるというただそれだけの理由で、生まれながらに持っている、誰からも奪われることのない基本的な権利

のことです。

 

ここで大切なポイントは3つです。

 

①生まれながらに持っている(天賦人権)

この権利は、国王や政府、あるいは神様から「与えられた」ものではありません。

人間として生まれた瞬間から、当然に持っている権利です。

この考え方を「天賦人権思想(てんぷじんけんしそう)」といいます。

 

②誰からも奪われない(不可侵の権利)

基本的人権は、たとえ国(政府)であっても、みだりに奪ったり、制限したりすることは許されません

日本国憲法第97条では、この基本的人権を「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」であり、「永久の権利として現在及び将来の国民に与へられる」と定めています。

 

③すべての人が持っている(普遍的な権利)

この権利は、人種、性別、信条、社会的身分などに関係なく、すべての人が生まれながらに等しく持っています。

 

2. なぜ「尊重」されなければならないのか?

歴史を振り返ると、人類は長い間、この「当たり前」の権利が認められない時代を生きてきました。

 

国王や貴族が絶対的な権力を持つ絶対王政の時代には、国民は支配される対象であり、その自由や権利は保障されていませんでした。

厳しい身分制度のもとでは、生まれた家によって人の価値が決められ、不平等な扱いを受けるのが当然とされていました。

近代になると、市民革命(アメリカ独立革命やフランス革命など)を通じて、人々は「人間の自由と平等」を求めて戦い、自らの手で人権を勝ち取ってきました。

日本でも、戦前の大日本帝国憲法下では、国民の権利は「臣民の権利」として、「法律の範囲内」でしか認められず、国家のために個人の自由が制限されることが多くありました。

 

このような、人権が踏みにじられてきた悲惨な歴史への深い反省から、現代の民主主義国家では、基本的人権を何よりも大切にし、最大限に「尊重」することが、国家の最も重要な責務であるとされているのです。

 

3. 日本国憲法が保障する基本的人権

日本国憲法は、この基本的人権を、主に3つの権利に分けて保障しています。

 

① 自由権

国(政府)から不当に干渉されたり、強制されたりすることなく、自由に生きる権利です。

人権の中でも、最も基本的な権利とされています。

精神の自由表現の自由思想・良心の自由信教の自由、学問の自由など。

身体の自由 :奴隷的な拘束を受けない自由、不当に逮捕・処罰されない権利など。

経済活動の自由 :居住・移転の自由、職業選択の自由、財産権の保障など。

 

② 平等権

すべての人が、人種、信条、性別、社会的身分などによって差別されない権利です。

日本国憲法第14条で「法の下の平等」として保障されており、すべての国民が法律の前で平等に扱われることを定めています。

男女間の平等や、部落差別(同和問題)の解消なども、この平等権に関わる重要な課題です。

 

③ 社会権

すべての人が、人間らしい豊かな生活を送ることを国に求める権利です。

自由権が「国から干渉されない自由(国家からの自由)」であるのに対し、社会権は「国に対して積極的に何かを要求する権利(国家による自由)」と言われます。

20世紀に入って、資本主義の発展とともに貧富の差が拡大したため、社会的・経済的に弱い立場の人々を救済するために生まれた、比較的新しい人権です。

 

生存権(第25条): 「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」。生活保護制度などの根拠となります。

教育を受ける権利

勤労の権利

労働基本権(団結権、団体交渉権、団体行動権)

 

このように、「基本的人権の尊重」という原則は、私たちが自由で、平等で、人間らしい生活を送るための、社会全体の土台となっています。

そして、自分の人権が大切であるのと同じように、他人の人権も尊重することが、この社会で共に生きていく上で不可欠なルールなのです。

 

まとめ

 

① 自由権

精神の自由、身体の自由、経済活動の自由を保障。

基本的人権(自由権)
分類 権利の内容
精神の自由 思想・良心の自由
信教の自由
学問の自由
表現の自由
集会の自由
結社の自由
通信の秘密
幸福追求権
法の下の平等
差別から保護される権利
プライバシーの権利
身体の自由 生存権
奴隷的拘束や苦役からの自由
法定手続の保障
逮捕に対する保障
刑罰の内容の保障
刑事裁判手続上の保障
経済活動の自由 職業選択の自由
居住移転の自由
外国移住の自由
国籍離脱の自由
財産権の保障

 <表現の自由>

 報道及び言論の自由創作の自由、 広告・宣伝の自由、 知る権利

 

② 平等権

性別、人種、社会的身分などで差別されない権利。

 

③ 社会権

人間らしく生きるための権利。

 

公民
現代社会の特色:少子高齢化 現代社会の特色:情報化 現代社会の特色:グローバル化 文化と私たち:日本の文化 文化と私たち:宗教と文化 文化と私たち:多文化共生 文化と私たち:家族 文化と私たち:社会生活 人権の尊重:人権思想の発達 人権の尊重:基本的人権の尊重 人権の尊重:日本国憲法 人権の尊重:国民の権利 人権の尊重:国民の義務 政治のしくみ:国会の役割 政治のしくみ:内閣の役割 政治のしくみ:裁判所の役割 政治のしくみ:三権分立 国民の政治参加:選挙制度 国民の政治参加:政党と世論 国民の政治参加:地方自治と住民 消費生活と市場経済:家計 消費生活と市場経済:流通と価格 消費生活と市場経済:生産と企業 消費生活と市場経済:労働者の権利 金融のはたらき:日本銀行の役割 金融のはたらき:銀行の役割 金融のはたらき:直接金融と間接金融 政府の役割と国民生活:財政 政府の役割と国民生活:租税 政府の役割と財政:社会保障制度 政府の役割と財政:景気変動 現代的な課題:生活環境 現代的な課題:地球環境 国際社会と国際経済:国民所得 国際社会と国際経済:貿易と為替相場 国際社会と国際経済:国家と国際連合 国際社会と国際経済:国際協力と世界平和