これは、すべての基本的人権の土台となる、大前提の権利です。
第14条「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信-条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
すべての人が、生まれや性別などで不合理な差別を受けず、法律の前で平等に扱われる権利です。
● 男女間の平等:雇用機会の均等、男女間の賃金格差の是正など。
● 部落差別(同和問題)の解消:歴史的な身分制度に由来する不当な差別の撤廃。
● 障がいのある人や外国人への差別の解消など。
国家権力によって個人の自由が不当に侵害されないための権利です。
人権の中でも最も歴史が古く、基本的な権利とされています。
● 思想・良心の自由(第19条):どんな考えや価値観を持つも自由で、それを理由に罰せられない。
● 信教の自由(第20条):どんな宗教を信じるも、信じないも自由。国が特定の宗教を強制したり、ひいきしたりしてはならない(政教分離)。
● 集会・結社・表現の自由(第21条):人々が集まって団体を作ったり、自分の意見を自由に発表したりする自由(新聞、出版、SNSなど)。
● 学問の自由(第23条):権力にしばられず、自由に研究や発表ができる。
● 奴隷的拘束・苦役からの自由(第18条):自分の意思に反して、奴隷のように働かされることはない。
● 法定手続の保障(第31条):法律によらなければ、処罰されたり、自由を奪われたりすることはない。
● 令状主義(第33条):現行犯でなければ、裁判官が出す令状がなければ逮捕されない。
● 黙秘権(第38条):自分に不利益な供述(自白)を強制されない。
● 居住・移転及び職業選択の自由(第22条):どこに住み、どんな職業につくも自由。
● 財産権の保障(第29条):私有財産を持つことが認められ、正当な補償なしに国に取り上げられることはない。
自由な競争の結果、貧富の差が拡大し、社会的・経済的に弱い立場の人々が生まれました。
そこで、すべての人が「人間たるに値する生活」を送れるよう、国に積極的な配慮を求める権利として、20世紀に入ってから認められるようになった比較的新しい権利です。
● 生存権(第25条):「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」生活保護制度などの根拠となります。
● 教育を受ける権利(第26条):すべての子どもが、その能力に応じて等しく教育を受ける権利。義務教育は無償とされています。
● 勤労の権利(第27条):働く意欲と能力のある人が、働く機会を国に求める権利。
● 労働基本権(労働三権)(第28条):働く人が、使用者(会社側)と対等な立場で交渉するために保障された権利。
● 団結権:労働組合を作る権利。
● 団体交渉権:賃金や労働条件について、会社側と交渉する権利。
● 団体行動権(争議権):要求を実現するために、ストライキなどを行う権利。
国民が、国の政治のあり方を決めるプロセスに参加するための権利です。
国民主権の原理を具体的に実現するための権利です。
● 選挙権・被選挙権(第15条):国会議員や地方公共団体の長・議員などを、選挙で選んだり(選挙権)、自ら立候補したり(被選挙権)する権利。
● 最高裁判所裁判官の国民審査権:最高裁判所の裁判官がその職にふさわしいかどうかを、国民が審査する権利。
● 憲法改正の国民投票権:憲法改正の際に、国民が賛成か反対かを投票で決める権利。
基本的人権が、国や地方公共団体の行為によって侵害されたり、その恐れがあったりする場合に、その救済や補償を国などに求めることができる権利です。
人権を実質的に保障するための「手続き的な権利」と言われます。
● 裁判を受ける権利(第32条):誰でも、トラブルが起きたときに、公平な裁判所で裁判によって解決してもらうことができる権利。
● 国家賠償請求権(第17条):公務員の違法な行為によって損害を受けた場合に、国や地方公共団体にその賠償を求めることができる権利。
● 刑事補償請求権(第40条):逮捕・拘禁された後、裁判で無罪が確定した場合に、国にその補償を求めることができる権利。
これらの権利は、一つ一つが独立しているのではなく、互いに関連し合って、私たちの「基本的人権」全体を支えているのです。
新しい人権とは、社会が時代とともに変化する中で、「これも人間らしく生きるためには不可欠な権利だよね」と、新しく主張されるようになった人権のことです。
憲法が作られた当時には、まだはっきりと意識されていなかった権利が中心です。
ここでは、その代表例である「プライバシーの権利」「知る権利」「環境権」などを中心に解説します。
日本国憲法が作られた1940年代と比べて、現代社会は大きく変化しました。
● 情報化の進展:インターネットやスマートフォンの普及、監視カメラの増加など、個人の情報が大量に集められ、利用される社会になりました。
● 行政国家化:政府や自治体の役割が大きくなり、私たちの生活に深く関わるようになりました。
● 環境問題の深刻化:経済発展の裏側で、公害や地球環境の悪化が、人々の健康や生活を脅かすようになりました。
こうした社会の変化に対応するため、憲法にはっきりと書かれていなくても、憲法の精神(第13条の幸福追求権など)から導き出されるべきだ、と考えられるようになったのが「新しい人権」です。
日本国憲法 第13条
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
→ この「幸福追求権」が、新しい人権を認めるための重要な根拠とされています。
「個人の私生活に関する情報を、みだりに公開されない権利」のことです。
情報化社会の進展により、国や企業が私たちの個人情報(名前、住所、購買履歴、病歴など)を大量に集めることが容易になりました。
SNSの普及で、個人の写真や情報が本人の知らないうちにインターネット上で拡散(炎上)してしまう危険性も高まっています。
こうした背景から、自分の情報を自分でコントロールする権利(自己情報コントロール権)も、この権利に含まれると考えられるようになっています。
個人情報保護法など。
「国民が、国や地方公共団体の持つ情報について、公開を求めることができる権利」のことです。
国民主権の社会では、私たち国民が、政府が何をしているのかを正しく知り、監視する必要があります。
政府が情報を隠してしまうと、私たちは正しい判断ができず、民主主義が成り立たなくなってしまいます。
公害問題などで、企業や政府が有害な情報を隠したことへの反省からも、この権利の重要性が叫ばれるようになりました。
情報公開法など。
「健康で快適な、良好な環境のもとで生活する権利」のことです。
高度経済成長期に、四大公害病をはじめとする深刻な公害が多発し、多くの人々の健康や命が奪われました。
きれいな空気や水、静かな環境といった、人間らしい生活の土台となる環境を守ることが、基本的な権利であると考えられるようになりました。
● 日照権(建物によって日当たりを妨げられない権利)や、景観権(美しい景観を守る権利)なども、この環境権の一種と捉えられることがあります。
● 環境アセスメント(環境影響評価):大きな開発事業を行う前に、それが環境にどのような影響を与えるかを事前に調査・評価する制度。
● アクセス権:マスメディア(新聞やテレビなど)に、自分の意見広告や反論記事などを掲載するよう求める権利。
● 自己決定権:自分の生き方や生活に関わることを、公権力に干渉されず、自分で決定する権利(インフォームド・コンセント:医師から十分な説明を受けた上での同意、など)。
| 新しい人権 | どんな権利か | なぜ重要になったか(背景) |
|---|---|---|
| プライバシーの権利 | 私生活の情報をみだりに公開されない権利 | 情報化社会の進展、個人情報保護の必要性 |
| 知る権利 | 国などの情報を公開するよう求める権利 | 国民主権の実現、行政の監視の必要性 |
| 環境権 | 良好な環境の中で生活する権利 | 公害問題の深刻化、生活環境の保全の必要性 |
これらの「新しい人権」は、まだ裁判で必ずしも認められていないものもありますが、私たちの社会がより良く、より公正になるために、今後ますます重要になっていく考え方です。
時代が変化し、新しい問題が生まれれば、それに合わせて、私たちの「人権」の内容も進化していくのです。