ヨーロッパに多くの移民や難民が向かうのには、いくつかの理由が複雑に絡み合っています。
かつてヨーロッパの国々(旧宗主国)がアジアやアフリカに持っていた植民地との間には、今でも言語や文化の面で深いつながりがあります。
そのため、旧植民地の人々が仕事を求めてヨーロッパに渡ることが多くありました。
第二次世界大戦後の経済復興期や、その後の経済成長の中で、ヨーロッパでは労働力が不足しました。
特に、人々があまりやりたがらない仕事の担い手として、国外から多くの労働者(移民)を受け入れてきた歴史があります。
ヨーロッパは、紛争や政治不安が続く中東や、貧困の問題を抱えるアフリカと地理的に近い位置にあります。
そのため、命の危険から逃れたり、より良い生活を求めたりする人々が、海を渡ってヨーロッパを目指すのです。
戦争や紛争、迫害などから逃れてきた人々を「難民」として保護するという国際的なルールがあります。
特に2015年頃には、シリア内戦などから逃れた人々がヨーロッパに大量に流入し、「ヨーロッパ難民危機」と呼ばれる状況になりました。
多くの移民を受け入れることは、ヨーロッパ社会にプラスとマイナスの両方の影響を与えています。
● 労働力不足の解消:少子高齢化が進むヨーロッパにおいて、移民は建設業やサービス業など、社会を支える貴重な働き手となっています。
● 経済の活性化:移民が消費者として物を買ったり、新しいビジネスを始めたりすることで、経済全体が活発になるという側面もあります。
● 多様な文化の流入(多文化社会):さまざまな国の文化や考え方が持ち込まれることで、社会がより豊かで多様性に富んだものになります。
● 文化や宗教の違いによる摩擦:移民と元々住んでいた人々との間で、生活習慣や宗教、価値観の違いから対立が生まれることがあります。
● 社会保障費の増大:移民が増えることで、医療や教育、社会福祉など、国が負担する費用が増加するという課題があります。
● 治安への不安:一部の移民が起こした事件などをきっかけに、「移民が増えると治安が悪くなるのではないか」という不安感が広がり、社会の分断につながることがあります。
● 雇用の競合:低賃金で働く移民が増えることで、同じような仕事に就いていた国内の労働者の賃金が下がったり、職を失ったりするケースも指摘されています。
移民問題は、ヨーロッパ全体が直面する大きな課題となっており、様々な動きにつながっています。
難民の受け入れをめぐって、積極的に受け入れようとする国(例:ドイツ)と、受け入れに強く反対する国との間で意見が対立しています。
EUとしてまとまった対策を取ることが難しくなっています。
移民に対する不満や不安を背景に、「移民の受け入れを制限すべきだ」と主張する政党が支持を集める動きが、ヨーロッパ各地で見られます。
イギリスがEUを離脱した理由の一つに、EUのルールによって移民の流入を自国でコントロールできないことへの不満があったと言われています。
「それぞれの文化を尊重し合おう」という多文化主義の考え方も、現実には移民が社会から孤立したり、コミュニティが分断されたりする原因になったという指摘もあり、そのあり方が問い直されています。
ヨーロッパの移民問題は、単純に「良い」「悪い」で判断できるものではありません。
労働力として社会を支えるというプラスの側面がある一方で、文化の摩擦や社会の分断といった深刻な課題も生み出しています。
この問題は、ヨーロッパがどのようにして多様な背景を持つ人々と共に社会を築いていくのか(=多文化共生)という、未来に向けた大きな挑戦であると言えるでしょう。