この問題で最も深刻な影響を受けているのは、オーストラリアやニュージーランドのような大きな国ではありません。
太平洋に浮かぶツバル、キリバス、マーシャル諸島といった、たくさんの小さな島国です。
これらの国々の多くは、「サンゴ礁」が積み重なってできた「環礁(かんしょう)」と呼ばれる島です。
土地が非常に低く、平坦です。国全体で最も高い場所でも、海からの高さ(海抜)がわずか数メートルしかありません。
海面がじわじわと上がってきている根本的な原因は、私たち人間の活動が引き起こしている「地球温暖化」です。
日本などの先進国が、工場を動かしたり、自動車に乗ったり、電気を使ったりする際に、石油や石炭を燃やして二酸化炭素(CO₂)などの「温室効果ガス」を大量に排出します。
この温室効果ガスが地球を毛布のように覆ってしまい、地球全体の気温が上がっていきます。
気温が上がると、2つの理由で海面が上昇します。
● 海水の熱膨張:
水は温められると体積が少し増えます(膨張します)。
地球全体の海水が温められることで、海面が上昇します。
● 氷河・氷床の融解:
南極やグリーンランドなどにある巨大な氷の塊(氷河・氷床)が溶け出し、その水が海に流れ込むことで、海水全体の量が増えて海面が上昇します。
海抜の低い島国にとって、わずかな海面の上昇でも、その影響は計り知れません。
これが最も深刻な問題です。
海面が上昇し続けると、国土そのものが海の中に沈んでしまい、国が地図の上から消えてしまう可能性があります。
ツバルでは、満潮になると、地面から海水が湧き出してくる場所もあります。
● 飲み水の塩水化:海水が島の地下に染み込み、井戸水などの貴重な地下水が塩水になってしまい、飲めなくなります。
● 農業への被害(塩害):畑の土にも塩分が含まれるようになり、タロイモなどの主食となる作物が育たなくなってしまいます。
もともとの海面が高くなっているため、台風や嵐が来た時に、高波が簡単に陸地を乗り越えてしまい、家や畑が大きな被害を受けるようになります。
地球温暖化による海水温の上昇は、サンゴ礁にも大きなダメージを与えます。
サンゴは高すぎる水温に耐えられず、白くなって死んでしまいます(白化現象)。
サンゴ礁は、魚たちの住処であり、島を波から守る防波堤の役割もしているため、これが失われると漁業や人々の暮らしに大打撃となります。
この問題には、非常に不公平な側面があります。
温室効果ガスを大量に排出しているのは、主に日本やアメリカ、中国といった先進国・工業国です。
最も深刻な被害を受けているツバルなどの島国は、温室効果ガスの排出量が世界で最も少ない国々です。
自分たちにはほとんど責任がないのに、他国の経済活動のせいで、自分たちの国が沈んでしまうという、非常に理不尽な状況に置かれています。
このままでは、住む場所を失い、国外へ移住せざるを得ない「環境難民」が生まれると心配されています。
オセアニアの島々が直面する海面上昇問題は、単なる自然現象ではなく、先進国に住む私たちの生活と密接につながった地球規模の人為的な問題です。
遠い南の島の話ではなく、私たちのエネルギーの使い方や消費生活が、国を存亡の危機に追い込んでいるという現実を理解することが、この問題を学ぶ上で最も大切なことです。