南アメリカの人口集中とスラム問題

 

 

1. なぜ都市に人々が集まるのか?(都市への人口集中)

20世紀後半以降、南アメリカの多くの国で、地方の農村から都市へと人々が大量に移動する現象が起きました。

①農村の貧しさ

仕事がない:農村部では、大規模な農園(プランテーション)で働く以外に仕事が少なく、安定した収入を得ることが難しいです。

土地を持たない農民:少数の大地主がほとんどの土地を所有しており、自分の土地を持たない貧しい農民がたくさんいます。

不便な生活:学校や病院、電気や水道といった生活に必要なインフラが十分に整っていません。

②都市への憧れと期待

このような厳しい状況から抜け出すため、農村の人々は「都市に行けば、きっと仕事があるはずだ」「もっと良い暮らしができるに違いない」という希望を抱いて、大都市を目指すのです。

この結果、ブラジルのサンパウロやリオデジャネイロ、アルゼンチンのブエノスアイレスといった大都市に、人口が異常なほど集中してしまいました。

 

2. 人口集中が引き起こす問題:「スラム」の形成

しかし、都市はやってきた人々全員の仕事や住居を用意できるわけではありません。

都市に移り住んだものの、十分なお金も仕事も見つけられなかった人々が住み着いた場所が「スラム」です。

スラムとは?

都市の郊外や山の斜面、川沿いなど、人々が住むには適さない場所に、廃材などで不法に建てられた家が密集している地区のことです。
ブラジルでは特に「ファベーラ」という名前で知られています。

なぜスラムができるのか?

都市の人口が急激に増えすぎて、住宅の供給が全く追いつきません。
農村から出てきたばかりの貧しい人々には、都市部で正式なアパートや家を借りるお金がありません。
そのため、法律を無視して、空いている土地に自分たちで勝手に家を建てて住み始めるしかないのです。

 

3. スラムが抱える深刻な課題

スラムでの生活は、多くの深刻な問題を抱えています。

① 劣悪な生活環境(インフラの未整備)

電気、水道、下水道がない:行政サービスが届かないため、電気を盗電したり、不衛生な水を使ったり、下水が整備されずゴミや汚物が垂れ流しになったりしています。
これにより、病気が広がりやすくなります。

災害の危険:山の急な斜面に建てられていることが多いため、大雨が降ると地滑りの危険に常にさらされています。

② 貧困と失業

スラムの住民の多くは、十分な教育を受けていないため、安定した職に就くことが難しく、日雇いの建設作業やゴミ拾いなどで生計を立てています。
貧困が次の世代にも受け継がれてしまう「貧困の連鎖」が起こりやすいです。

③ 治安の悪化

貧困や失業を背景に、強盗や殺人、麻薬の売買といった犯罪の温床になりやすいです。
警察の力も及びにくいため、ギャングなどが地域を支配し、非常に危険な場所となっているスラムも少なくありません。

 

4. 課題解決に向けた取り組み

この深刻なスラム問題を解決するため、政府や住民自身による様々な取り組みが行われています。

政府や自治体の取り組み

● スラムに電気や水道、下水道を通すインフラ整備を行なう。

● 安全な公営住宅を建設し、住民を移住させる。

● 職業訓練を実施して、住民が安定した仕事に就けるよう支援する。

● 警察によるパトロールを強化し、治安を改善する。

住民自身の活動やNGOの支援

● 住民たちが協力して組合を作り、生活環境の改善に取り組む。

● 国内外のNGO(非政府組織)が、子どもたちのための学校を作ったり、医療を提供したりする。

 

まとめ

南アメリカの都市への人口集中とスラム問題は、農村部の貧困という根深い問題から生まれています。

スラムは、劣悪な住環境、貧困、治安の悪化といった多くの課題を抱える一方で、そこに住む人々の生命力や文化(サンバなど)を生み出す場所でもあります。

この問題は、南アメリカ社会が抱える「経済格差」という大きな課題を象徴していると言えるでしょう。