ジェットコースターが高い場所から急降下したり、クレーンが重い荷物を持ち上げたり。
これらの現象の裏には、物体が持っている「エネルギー」と、力が物体に作用する「仕事」という、物理学の重要な概念が隠されています。
ここでは、物体の運動に関わるエネルギーの種類と、それらが保存される法則、そして理科の世界での「仕事」の定義について、詳しく解説していきます。
物体が運動するときに関わるエネルギーを、まとめて力学的エネルギーと呼びます。
これには、大きく分けて2つの種類があります。
高い場所にある物体が持っている、たくわえられたエネルギーのことです。
物体の質量が大きいほど、位置エネルギーは大きい。
物体がある基準面からの高さが高いほど、位置エネルギーは大きい。
ダムの高い場所にたくわえられた水。
その水が低い場所に流れ落ちることで、水車を回すなどの「仕事」をすることができます。
運動している物体が持っているエネルギーのことです。
物体の質量が大きいほど、運動エネルギーは大きい。
物体の速さが速いほど、運動エネルギーは非常に大きくなります。
(速さの2乗に比例します)
走っているボーリングの球。
その速さと重さによって、ピンを倒すという「仕事」をすることができます。
ジェットコースターや振り子のように、物体が運動するとき、位置エネルギーと運動エネルギーは互いに姿を変え合います。
速さが遅くなる → 運動エネルギーが減少
高さが高くなる → 位置エネルギーが増加
速さが速くなる → 運動エネルギーが増加
高さが低くなる → 位置エネルギーが減少
ここで非常に重要なのが、力学的エネルギー保存の法則です。
「摩擦や空気抵抗がなければ、位置エネルギーと運動エネルギーの合計(=力学的エネルギー)は、運動の前後で常に一定に保たれる。」
最も高い位置: 位置エネルギーが最大、運動エネルギーは最小(またはゼロ)。
最も低い位置: 位置エネルギーが最小(またはゼロ)、運動エネルギーは最大。
途中の位置: 位置エネルギーと運動エネルギーを両方持っているが、その合計値はどの地点でも同じ。
減少した位置エネルギーの分だけ、運動エネルギーが増加する(またはその逆)。
このようにエネルギーは、形は変えるものの、その総量は決して消えたり、勝手に生まれたりしないのです。
日常で使う「仕事」という言葉と、理科で使う「仕事」は意味が少し違います。
理科の世界で「仕事をした」と言えるのは、以下の2つの条件がそろったときだけです。
物体に力を加える。
その力の向きに物体を動かす。
仕事 (J) = 力の大きさ (N) × 力の向きに動かした距離 (m)
単位: 仕事の単位は J(ジュール) を使います。
壁を押しても動かなかった → 力を加えても、距離がゼロなので仕事はゼロ。
荷物を持って水平に歩く → 力の向き(上向き)と移動の向き(水平)が垂直なので、仕事はゼロ。
道具(てこ、滑車など)を使っても、使わなくても、仕事の大きさ(J)は変わらない。
これを仕事の原理といいます。
小さな力で物体を動かすことができる(力を加える距離は長くなる)。
力の向きを変えることができる。
つまり、道具は仕事を「楽に」してくれるが、仕事そのものの量を「減らして」くれるわけではありません。
同じ仕事をするにも、速く終わらせる場合と、ゆっくり終わらせる場合があります。
この「単位時間(1秒間)あたりにする仕事の量」、つまり仕事の効率やペースを表すのが仕事率です。
仕事率 (W) = 仕事 (J) ÷ かかった時間 (s)
単位: 仕事率の単位は W(ワット) を使います。
1Wとは、「1秒間に1Jの仕事をする」ペースのことです。
同じ量の仕事でも、短い時間で終えた方が、仕事率は高くなります。
これらのエネルギーや仕事の概念は、物理学の最も基本的な土台となる考え方です。
身の回りの運動が、どのようなエネルギーの移り変わりで起こっているのかを考えてみましょう。