『竹取物語』は、日本に現存する最古の物語とされており、平安時代(9世紀~10世紀頃)に成立したと考えられています。作者は不明です。
今は昔、竹取の翁といふものありけリ。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さぬきの造となむいひける。
その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。
翁言ふやう、「我、朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて、知りぬ。子となり給ふべき人なめり。」とて、手にうち入れて、家へ持ちて来ぬ。妻の嫗に預けて養はす。
うつくしきこと限りなし。いと幼ければ、籠に入れて養ふ。
竹取の翁、竹を取るに、この子を見つけてのちには、竹の中に、節を隔てて、黄金ある竹を見つくること重なりぬ。かくて、翁、やうやう豊かになりゆく。
この児、養ふほどに、すくすくと大きになりまさる。三月ばかりになるほどに、よきほどなる人になりぬれば、髪上げなどさうして、髪上げさせ、裳着す。帳台のうちよりも出ださず、いつき養ふ。
この児のかたち、けうらなること世になく、屋のうちは暗き所なく光満ちたり。翁、心地あしく、苦しき時も、この子を見れば、苦しきこともやみぬ。腹立たしきことも慰みけり。
翁、竹を取ること久しくなりぬ。いきほひ猛の者になりにけり。
この子、いと大きになりぬれば、名を、三室戸斎部の秋田を呼びて、つけさす。秋田、なよ竹のかぐや姫とつけつ。
このほど三日うちあげ遊ぶ。よろづの遊びをぞしける。男はうけきらはず呼び集へて、いとかしこく遊ぶ。
今となっては昔のことだが、竹取の翁(おきな)という者がいた。野や山に分け入って竹を取っては、様々なことに使っていた。名前を、さぬきの造(みやつこ)と言った。
その竹林の中に、根元が光る竹が一本あった。不思議に思って、近寄って見てみると、竹の筒の中が光っている。それを見ると、三寸くらいの大きさの人が、とてもかわいらしい様子で座っている。
翁が言うことには、「私が毎朝毎晩見る竹の中にいらっしゃることで、分かった。私の子どもにおなりになるはずの方であるようだ。」と言って、手にのせて、家へ持ってきた。妻であるおばあさんに預けて育てさせる。
かわいらしいことこの上ない。とても小さいので、籠に入れて育てる。
竹取の翁は、竹を取りに行くと、この子を見つけてからは、竹の中に、節と節の間が黄金で満ちている竹を見つけることがたび重なった。こうして、翁は、だんだんと豊かになっていく。
この子は、育てるうちに、すくすくと大きく成長していく。三ヶ月ほどになる頃に、ちょうど良い大きさの人になったので、(成人したしるしとして)髪を結い上げる儀式などを用意して、髪を結い上げさせ、(女性の成人の儀式である)裳着(もぎ)をさせる。(普段は)御帳台(みちょうだい)の中からさえも出さず、大切に育てる。
この子の容姿は、清らかで美しいこと世にまたとなく、家の中は暗い所がなく光で満ちあふれていた。翁は、気分が悪く、苦しい時も、この子を見ると、苦しいことも消えてしまった。腹立たしいことも気持ちが穏やかになった。
翁は、竹を取る仕事も長年になった。勢いが盛んな者(お金持ち)になった。
この子が、すっかり大きくなったので、名前を、三室戸斎部(みむろどのいんべ)の秋田という人(当時、名付けの役職にあった人)を呼んで、つけさせる。秋田は、なよ竹のかぐや姫と名付けた。
この(名付けの)日から三日間、盛大なお祝いの宴を開く。あらゆる音楽の遊びをした。男は身分の上下を問わず誰でも呼び集めて、たいそう盛大に楽しむ。
古文には、現代語と意味が異なる単語や、今では使われなくなった単語がたくさんあります。
まずは『竹取物語』の冒頭で出てくる基本的な単語を覚えましょう。
| 単語 | 現代語訳 | 例文(竹取物語より) |
| 翁 | おじいさん | 竹取の翁といふ者ありけり。 |
| いと | とても、非常に | いとうつくしうてゐたり。 |
| うつくし | かわいらしい、愛らしい | いとうつくしうてゐたり。 |
| あやし | 不思議だ、神秘的だ | あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。 |
| よろづ | いろいろ、さまざま | よろづのことに使ひけり。 |
| なむ | ~だなあ(強調を表す) | もと光る竹なむ一筋ありける。 |
ポイント:「うつくし」は現代の「美しい」とは少し違い、かわいらしさを表す言葉です。
また、「あやし」も「怪しい」という悪い意味ではなく、「不思議だ」という神秘的な意味で使われることが多いです。
昔の文章は、「歴史的仮名遣い」で書かれています。
まずは基本的なルールを覚えましょう。
● 「はひふへほ」は「わいうえお」と読むことがある
例:「いふ」→「いう」、「つかひ」→「つかい」
● 助詞の「は」「へ」は「わ」「え」と読む
● 「ゐ」「ゑ」は「い」「え」と読む
例:「ゐたり」→「いたり」
● 「む」は「ん」と読む
例:「なむ」→「なん」
「けり」は過去を表す助動詞で、「~た」と訳します。物語などによく出てくる言葉です。
原文:「今は昔、竹取の翁といふものありけり。」
現代語訳:「今となっては昔のことだが、竹取の翁という人がいた。」
文中に特定の助詞(係助詞)が出てくると、文末の活用形が変化するルールです。
『竹取物語』の冒頭では、強意(強調)を表す「なむ」が使われています。
「なむ」 → 文末が連体形になる
原文:「名をば、さぬきの造となむいひける。」
解説:「なむ」があるので、文末の「けり」が連体形の「ける」に変化しています。
古文では、誰がその動作をしているのかという「主語」がよく省略されます。
前後の文脈から、誰の行動なのかを補って読むことが大切です。
現代文に比べて、読点(、)が少なく、一文が長いことがあります。
どこで意味が区切れるのかを意識しながら、ゆっくり読んでみましょう。
最初は、古文だけを読んで完全に理解するのは難しいかもしれません。
まずは現代語訳を読んで物語のあらすじを掴んでから、古文と照らし合わせて単語や文法の意味を確認するのがおすすめです。
これらのポイントを押さえながら『竹取物語』を読むことで、古文の世界がより一層面白くなるはずです。日本最古の物語を楽しみながら、古文の基礎を学んでいきましょう。